システム開発のプロジェクトにおいて、しばしば耳にするWBSという言葉について、正しい理解ができていますでしょうか?
今回は、WBSが何かを整理し、ガントチャートとの違いや作り方について整理します。
WBSとは
WBSという言葉は、システム開発の現場では、進捗管理表、スケジュール表という意味で使われることがあります。しかし、スケジュール管理とは本来的な意味ではありません。このことをはっきりと伝えているサイトや書籍はなかなかないかと思います。
WBSとは、work breakdown structureの略で日本語では作業分解図と呼ばれるように、スケジュール管理という要素は全くありません。システム開発の現場で使われる本来的な意味は、あるシステムを開発するにあたって必要となる作業(要素)を洗い出すために分解していくこと、分解した結果です。
最終的に作りたいものを「成果物」といい、その成果物を作成するために必要な要素をワークパッケージと呼びます。更に、そのワークパッケージを作成するために必要となる活動や作業のことをアクティビティ(タスク)と呼びます。注意点として、PMBOKにおけるWBSの定義では、WBSの最下層となるのはワークパッケージまでという点です。これは、アクティビティ(タスク)の粒度までいくと管理が煩雑になることを懸念しているためです。
ワークパッケージに成果物を要素分解する時のコツは、ワークパッケージの単位を1週間程度で作成できる粒度にし、その作成物が目で見て確認可能な状態にすることです。また、要素分解したWBSが妥当かどうかは、ワークパッケージから逆にたどっていき、それぞれのワークパッケージを組み合わせたら、成果物が出来上がるかという観点で確認をします。
また、このWBSの作成というのは、あらゆる粒度で行います。例えば、以下の2つの例はどちらも同じWBSによる要素分解ですが、例①はシステム開発全体に関わる作業のことを意味していますが、例②はシステム開発における開発工程にかかわる作業に限定しています。しかし、どちらもWBSの作成という点では同じであり、どちらも必要な整理です。
スポンサーリンク
WBSとガントチャートとの違いと作り方
ガントチャートとは、WBSによって要素分解したワークパッケージ及びアクティビティ(タスク)を並べて、ワークパッケージの作成状況の進捗管理(予定と実績の管理)をするものです。したがって、スケジュール管理とったらWBSではなく、ガントチャートを指しています。
このように、ガントチャートとは、WBSでをもとに、作成していくものになります。
スポンサーリンク
正しい意味を理解しておくこと
よくシステム開発の現場では、「WBS入力しておいて」って言われることあると思います。これは「進捗入れておいて」という意味で使われます。しかし、本来の意味からすれば間違っているということが今回分かったのではないでしょうか。
しかし、現場ではその方がわかりやすいですし、伝わるのでそのように呼ばれていると思いますし、あえて訂正するとめんどうなやつと思われるかもしれません。また、そもそも正しい意味を理解している人はどれだけいるでしょうか。
とはいえ、正しい意味を理解したうえで話を聞くのと、意味もわからずにいるのでは、雲泥の差です。
今回の記事をきっかけにWBSに関する正しい意味と、ガントチャートとの関係についてご理解いただけますと幸いです。
コメント