要件定義で作成する3つの業務フローとは

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システム開発

要件定義の成果物と聞いて何を思い浮かべますでしょうか?

たくさんの要件定義成果物がある中で、最も重要な成果物の1つが業務フローです。

しかし、業務フローといっても要件定義で作成すべき業務フローには3階層あり、これら3つの業務フローをしっかりと記述することで、業務の抜け漏れを防ぎ、漏れのない要件定義をすることができるようになります。

そこで、要件定義で作成すべき業務フローについて解説します。

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要件定義で作成すべき3つの業務フロー

要件定義で作成すべき業務フローとは次の3つです。

概観業務フロー

業務フロー

システム化業務フロー

しかし、プロジェクトや会社によってこれら3つの呼び方は様々です。また、IPA情報処理推進機構の呼び方も一般的に使われる呼び方と異なる部分があります。

したがって、まずは呼び方について次の表でまとめます。

階層現場で良く耳にする表現
(本記事内での読み方)
IPA情報処理推進機構での呼び方その他の呼び方
1概観業務フロービジネスプロセス関連図業務プロセス関連図
2業務フロービジネスプロセスフロー(業務フロー)プロセスフロー
3システム化業務フロービジネスプロセスフロー(システム化業務フロー)システムフロー

そのうえで、今回当記事をまとめるにあたっては、IPA情報処理推進機構が発行している「ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ」で示されている例も参考にしながら解説していきたいと思います。ぜひ、各所にリンクを記載していますので、IPA情報処理推進機構が掲載している図解とともにご覧いただければより理解が深まるかと思います。(本記事では簡易的な図解を載せていますが、具体的なイメージを持つために詳細を確認される場合は、IPA情報処理推進機構が作成されているサンプルをご覧いただくことを強くお勧めいたします。)

ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ | アーカイブ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
情報処理推進機構(IPA)の「ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ」に関する情報です。

要件定義で作成すべき3つの業務フローの関係性

概観業務フロー、業務フロー、システム化業務フローの3つの関係性は次のように、徐々に業務を詳細化していく関係性にあります。

詳細については、IPA情報処理推進機構 ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ 
7.5 ビジネスプロセスを漏れなく、正確に記述する P379を参照してください。

概観業務フロー(ビジネスプロセス関連図)からスタートとして、業務フローへと詳細化し、業務フローをもとにシステムフロー(システム化業務フロー)を作成していきます。このように、業務フローとは、徐々に業務とシステムの解像度を上げながら、業務とシステムの関係性を定義していくと理解いただければと思います。

例えば、1つの企業の業務に「購買」業務があるとまずは概観業務フローで定義します。次に、その購買業務について詳細化し、業務フローとして購買業務の全貌をまとめます。そして、最後に、購買業務の中で1つのプロセスの中で利用者やシステムがどのような役割を担っているかを整理していきます。

要件定義工程では、1つの目の業務フローから作成していき、最終的には3階層目の業務フローまでを描くことを目標としていきます。

具体的にどのような業務フローを書くべきか、詳しくは次の章以降で解説します。

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概観業務フロー(ビジネスプロセス関連図)

1つ目の概観業務フロー(ビジネスプロセス関連図)は、業務を取り巻く周辺環境や外部環境と、業務の全体的なつながりを表すフローです。

1つ1つの箱はそのまま”業務”と呼ばれます。

今回のシステム化の対象を明確にすることが目的です。そのため、プロジェクトの対象(スコープ)範囲を確認するために定義が必要で、結果的にスコープ外になる業務についても整理します。

IPA情報処理推進機構の解説では、市の図書館システムの刷新プロジェクトを例に記載されていますが、本記事ではよくある基幹システム業務を例に図解しています。


詳細については、IPA情報処理推進機構 ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ 
7.5 ビジネスプロセスを漏れなく、正確に記述する P384を参照してください。

 

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このように、各業務は大きな塊となっており、それぞれの業務の関係性を表しています。

また、今回のスコープとそれ以外の部分の関係性についても整理しています。例えば、IPA情報処理推進機構の例では、図書館本館支所の蔵書管理は、学校図書館と相互貸出業務でつながりがあります。したがって、図書館本館支所と学校図書との相互貸出を実現するために蔵書情報についての連携(外部インターフェース)が発生することが想像できます。一方で、同じ図書館に関する情報であっても、開館スケジュールに関する管理は今回のスコープではないということも読み取ることができます。

本記事の例でいえば、受注や購買、それに伴う物流や在庫管理がスコープになりますが、債権債務といった会計領域はスコープ外という位置づけになります。しかし、会計領域に対して何かしらのインターフェースが別システムとの間で発生することは読み取ることができます。

このように、ビジネスを俯瞰したときにどの業務がスコープとなり、周辺環境とどのような関係があるかを整理するために、概観業務フロー(ビジネスプロセス関連図)は作成されます。

 

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業務フロー

2つ目は業務フローで、概観業務フローの1つの箱を取り出して、さらに詳細化したフローです。業務を大枠で捉えたフローになります。ポイントは、システムのことは考えず、手段に縛られない、業務の本質的な流れを明確にすることです。

1つ1つの箱はそのまま”業務プロセス”と呼ばれます。

業務プロセスの単位で、業務要件定義書(業務処理定義書)を作成することが多いです。

業務プロセスとは、あるきっかけによって開始され、その目的が完了すると終了する仕事のことです。例えば、「受注」というプロセスでは、注文が来たというきっかけによって始まり、注文を登録することで仕事は完了となる、というような流れ、塊を表します。そのため、始まりと終わりを意識して業務を分解していくと業務プロセスは定義しやすくなります。

業務プロセスについては、いつ、だれが、何を、どこで、どのようにするのかなど、5W2Hで業務を詳細化し、どのような業務かを定義します。ここで定義した内容が業務要件定義書となります。

業務フローについては、以下のような粒度で記載されます。

詳細については、IPA情報処理推進機構 ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ 
7.5 ビジネスプロセスを漏れなく、正確に記述する P390を参照してください。

 

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概観業務フロー(ビジネスプロセス関連図)で定義された業務をさらに詳細化しています。IPA情報処理推進機構の例では、貸出業務について詳細化しており、利用者が本を借りに来てから、貸出しするまでが1つの貸出し業務であり、その間には、利用者確認や予約資料の取り出しなど、システムに依らない業務の本質的な流れが定義されていることがわかります。本記事では、購買業務をより詳細化し、調達の依頼から実際にモノを入庫し、受け入れるまでの一連の流れを図解したイメージを示しています。

このように、システムのことは一旦抜きにして本質的に業務がどのように行われているのかを整理することが重要です。

 

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システム化業務フロー(システムフロー)

最後は、システム化業務フローです。システム開発において単に業務フローという場合は、このシステム化業務フローを指している場合が多いです。

業務フローで定義した”業務プロセス”の1つをさらに抜き出して詳細化したフローがシステム化業務フローです。ポイントは、作業の流れとそれを支えるシステムの関係を表していることです。

このシステム化業務フローを作成するタイミングではじめて、業務とシステムの関係性が表現されます。逆にいえば、前述の業務フローの段階ではシステムのことは考えずに整理して良いということです。

業務の中でどのようにシステムが関わるのか、逆にいえば、人が行う作業(マニュアル作業/ハンド作業/オフライン業務などと呼ばれる)とシステムが行う処理とをそれぞれ識別するためにシステム化業務フローを作成します。

具体的なイメージは以下のような形です。

詳細化については、IPA情報処理推進機構 ユーザのための要件定義ガイド 第2版 要件定義を成功に導く128の勘どころ 
7.5 ビジネスプロセスを漏れなく、正確に記述する P394を参照してください。

 

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業務フローの中で定義された業務をさらに詳細化しています。IPA情報処理推進機構の例では、資料貸出をする中でシステムがどのような機能を、いつユーザに対して提供しているのかがわかるように定義されています。本記事では、注文書送付という業務において、送付履歴を確認する機能、実際に発行を承諾する機能、そして印刷し、履歴を更新する機能がユーザに対して提供されていることがわかります。

また、縦軸の記載粒度は、「役割」で記載します。例えば、担当者とは別に、担当者の業務を許可する承認者がいた場合は、本記事のように縦軸の粒度(レーン)を分けるべきです。なぜなら、担当者と承認者とでは行うべき業務が異なり、そのときに利用するシステム(仕組み)も異なるためです。このような情報を盛り込むために、「役割」を細分化して業務フローを記載することをお勧めします。

この役割の切り分けをすることで後続の工程にて、権限設定を定義することができるようになります。したがって、役割が違う場合は、レーンを分けて記載します。

また、今回の解説の本筋ではありませんが、システムフローが明確になることで、今回のシステム開発で必要となるシステム機能の一覧も合わせて明確になります。したがって、設計以降の工程で開発すべき機能がわかり、見積に必要な情報も出揃ってくるということもぜひ頭の片隅に置いておいていただければと思います。

 

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要件定義で書く業務フローの違いを抑える

以上、概観業務フロー、業務フロー、システムフローという要件定義で書く3種類の業務フローに関して解説していきました。

様々な言葉で呼ばれてがちなフローですが、業務フローには階層があること、そしてそれぞれ目的が異なり、記載の粒度、明らかにしなければいけないことも異なるということがご理解いただけたしょうか。

最後にもう一度、今回の解説で出てきた言葉を再掲して、解説を終わります。

どのような言葉で表現されてもそれぞれの本質を理解していればもう道に迷うことはないと思います!

階層現場良く耳にする表現
(本記事内での読み方)
IPA情報処理推進機構での呼び方その他の呼び方
1概観業務フロービジネスプロセス関連図
2業務フロービジネスプロセスフロー(業務フロー)プロセスフロー
3システム化業務フロービジネスプロセスフロー(システム化業務フロー)システムフロー

最後まで御覧いただきありがとうございました。

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