システムエンジニア(SE)は、パソコンに向かってカタカタとキーボードを叩いている印象がありますが、技術力だけでなく、優れたコミュニケーション能力も求められる職業です。プロジェクトの成功は、円滑な意思疎通による部分が大きく、チーム全体やクライアントとの関係構築が重要な要素となります。
本記事では、システムエンジニアに必要なコミュニケーション能力について、プロジェクトマネージャー、クライアント、チームメンバーとの関係を中心に解説します。
システムエンジニアに必要なコミュニケーション
そもそもシステム開発とは様々な立場の「人」が関わりながら進行していきます。これらの「人」をステークホルダーということもできます。
こうした「人」と関わり、意思疎通をはかりながらプロジェクトを遂行する必要があります。
ここでいうシステムエンジニアに求められるコミュニケーションとは、意思疎通による合意形成の積み重ねです。一方的に論破したり、逆に仲良しこよしになったりといったコミュニケーションではなく、合意形成が重要です。
そこで、プロジェクトマネージャーやクライアント、そしてチームメンバーと、システムエンジニアがよくかかわるこらら3つの立場の人たちとどのようなコミュニケーションをしていくべきかについて整理していきます。
プロジェクトマネージャーとのコミュニケーション
プロジェクトマネージャーはシステム開発全体をマネジメントする人です。システムエンジニアは、プロジェクトマネージャーと協力し、プロジェクト全体が前に進むように尽力していくことが求められます。
明確な報告と共有
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクト全体の進捗管理や課題解決を担当しています。そのため、システムエンジニア(SE)は、PMに対して進捗状況や問題点をタイムリーに報告し、重要な情報を正確に共有する必要があります。この際、以下のポイントを意識しましょう。
- 簡潔さと具体性:冗長な説明を避け、必要な情報を要約して伝える。
- 事実ベースの報告:主観ではなく、客観的なデータや事実を基に話す。
- 課題提起と提案:問題が発生した場合は、課題だけでなく解決策も提示する。
フィードバックの受け入れ
PMからのフィードバックを受け取る際には、謙虚な姿勢で対応し、建設的に改善に取り組むことが求められます。時には、PMから無茶なお願いをされたり、こちらの考えと異なる方針を示されたりすることもあります。しかし、反論が必要な場合も、感情的にならず、論理的に自分の意見を伝えることが重要です。
時々、PMと喧嘩腰になっているシステムエンジニアを見かけますが、PMとSEは敵ではありません。仲間であり、1つのチームです。
互いに尊重し合う気持ちを持つことを決して忘れてはいけません。
クライアントとのコミュニケーション
システムエンジニアは、企業や官公庁といったクライアントと一緒になって実際に開発するシステムの要件や仕様を整理し、システムを作っていくことが求められます。そのため、時にはプロジェクトマネージャーやチームメンバー以上に、クライアントとのコミュニケーションの方が多くなり、プロジェクトの成否を左右する重要な役割を担います。
ニーズのヒアリング
クライアントとの初期段階、特に上流工程と言われるような要件定義や基本設計における打合せでは、彼らのニーズや要望を正確に引き出すことと、その内容について合意していくことが重要です。以下のスキルが役立ちます。
- 傾聴力:クライアントの話を注意深く聞き、必要な情報を漏らさず把握する。
- 質問力:曖昧な点を確認し、具体的な内容に落とし込む質問をする。
- 要件整理力:聞き取った内容を文書や図式でまとめ、クライアントと共有して認識のズレを防ぐ。
技術的な内容の平易な説明
クライアントは必ずしも技術的な専門知識を持っているわけではありません。世の中にはシステム部門がない会社も多く存在します。そのため、ITリテラシーの高くない人に向けても、できるだけ専門用語を避け、わかりやすく説明する能力が求められます。
具体的には、次のような対応を取ります。これも合意形成をしていくために必要なプロセスとなります。
- 専門用語を使わない:”排他制御をかける” ではなく、”同時処理を防ぐ” と表現。
- 図や例を活用:文章だけではなく、視覚的な資料を用いることで理解を共有する。
信頼関係の構築
クライアントとの信頼関係は、プロジェクトの円滑な進行に直結します。日頃から誠実な対応を心がけ、約束を守ることが信頼を築く鍵となります。打合せの時だけコミュニケーションをとるのではなく、日々のメールや電話といったやり取りを積み重ねていく中で信頼関係は醸成されていきます。
信頼関係が構築されていれば、システムエンジニア側が困った時にもクライアントから手を差し伸べてくれることもあります。
チームメンバーとのコミュニケーション
システム開発は一人では実施できません。他のシステムエンジニアやシステムエンジニアが設計した設計書をもとにプログラミングするプログラマーと一緒にプロジェクトを進めていきます。
そのため、チームメンバー、つまりは横とのコミュニケーションも非常に重要です。
情報共有と透明性
チーム内での情報共有が不十分だと、プロジェクト全体に影響を及ぼします。要件や仕様を伝え忘れていたであったり、多いのは変更要件があったにもかかわらず、その情報が行き渡っていなかったりということは、作業の手戻りを招くことになり、進捗への大きな影響が発生します。
勿論、プロジェクトマネージャーも情報共有と透明性の確保には尽力する責任がありますが、実際に情報をキャッチし、発信していく立場にあるひとりのシステムエンジニアという立場であったもその重要性は計り知れません。そのため、以下の方法で情報の透明性を高めましょう。
- 定期ミーティング:進捗や課題を共有する場を設ける。
- ツール活用:チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用して情報を一元化。
- ドキュメント化:重要な情報を文書化し、全員がアクセスできる状態にする。
相互理解の促進
どの立場とのコミュニケーションでも同じことが言えますが、チームメンバーのスキルや性格は多様です。円滑なコミュニケーションのためには、以下を意識しましょう。
- 相手の立場を理解する:異なる役割や視点を尊重し、相手の意見に耳を傾ける。
- ポジティブなフィードバック:良い点を認め、互いにモチベーションを向上させる。
- 問題解決への協力:メンバーが困っている際には積極的に声をかける。
コンフリクトの管理
プロジェクトマネージャーとのコミュニケーションでもそうですが、時々システムエンジニア同士でいつも言い合いになっているところを見かけます。しかし、プロジェクトマネージャーもそうですが、同じ目標を達成しようとしている仲間であるという意識を忘れてはいけません。
意見の衝突が発生した場合、冷静に対応することが重要です。感情的にならず、問題の本質にフォーカスし、建設的な解決を目指しましょう。
まとめ
システムエンジニアに求められるコミュニケーション能力は多岐にわたります。プロジェクトマネージャーとの信頼関係、クライアントとの要望のすり合わせ、チーム内での協力体制構築など、それぞれに適したスキルが必要です。これらを実践することで、プロジェクトの成功率を高めるだけでなく、自身のキャリアアップにもつながります。
ぜひ、日々の業務の中でこれらのスキルを意識し、磨き続けていきましょう。
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