日本のIT業界において重要な役割を果たしているSIer(システムインテグレーター)ですが、近年その課題と将来性が大きく注目されています。
私も普段SIerに身を置き仕事をする中で、様々な課題と将来性を考えてきました。そこで、今回はまさにSIerの将来を左右するAI、特に生成AI、ChatGPTを使って、導き出したSIer業界の現状や抱える課題、そして将来の可能性について深掘りしてみました。
これからのキャリアやビジネス戦略を考えるヒントになれば幸いです。
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SIer業界の現状
これまでのSIerは、企業や官公庁のITインフラ構築や運用、システム開発を全般的且つ包括的にサポートしてきました。その市場規模は依然として大きく、日本国内では多くの企業がSIerが提供するサービス、システムを活用してビジネスを運営しています。
そして、SIerはこれまで企業や官公庁といったクライアントが要求したものをある種、言われた通りにシステムとして実現することで、クライアントや市場のニーズに応えてきたという過去があります。もちろん現在でもそうしたビジネスモデルやニーズは根強く残っております。時には“御用聞き”と揶揄されることもありました。
一方で、昨今の目まぐるしいほどのクラウドコンピューティングやAI(人工知能)、DX(デジタルトランスフォーメーション)の普及により、従来のオンプレミス型システムに依存したビジネスモデルは変革を迫られています。特に以下の点が昨今のSIer業界に影響するの大きな特徴・事象と言えます。
- クラウドの台頭: AWSやMicrosoft Azureなどのクラウドプロバイダーが台頭。従来のシステム開発手法をSIer自身が見直す契機の増加。
- コスト競争の激化: グローバル化に伴って海外ベンダーとの競争や、クライアントによる価格圧力が増加。
- 人材不足: 高度な技術を持つ技術者、エンジニアの不足が深刻化。
- クライアントの内製化:クラウドの台頭を筆頭により安価により簡単にサービスやシステムを利用できるようになったことでSIerに依存せず、クライアント自らシステム導入・開発を行うケースが増加。
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SIer業界の課題
ビジネスモデルの陳腐化
従来のSIerビジネスは、顧客企業ごとにカスタマイズされたシステムを提供し、その保守運用で安定収益を得るモデルが中心でした。しかし、クラウドの普及によりこのモデルは大きな転換を迎えているといえます。
- クラウドの標準化: カスタマイズの必要性が低下し、顧客自身が自立し、SIerに依存しないよういなっている。クラウドシステムはSaaSに代表されるように、サービス利用者全員が同じサービス、機能を享受することを前提としている。そのため、クラウドサービス標準に沿うことが増え、カスタマイズの必要性が低下の一途をたどっている。
- 利益の減少: システム導入費用が削減され、収益確保が難しい状況になっている。クラウドを使ったシステム導入はオンプレのシステム導入に比べて、インフラ環境の準備は勿論のこと、アプリケーションの開発の難易度も下げている。
技術革新への対応遅れ
AIやIoT、ブロックチェーンといった最新技術の進化が著しい中、多くのSIerはこれらの技術を活用した新サービスの開発に遅れを取っています。
- 既存システムの老朽化: 従来システム、レガシーシステムの運用保守、追加開発に人的リソースや金銭的リソースが割かれ、新規技術への投資、最新技術を使ったシステム開発が困難。
- 教育体制の不足: 最新技術を提供する側のエンジニアでさえも、再教育やスキルアップ、リスキリングが追いついていない。
働き方改革・人材確保への対応
SIer業界は、多重下請け構造や納期至上主義による長時間労働が根強く残っているため、一部ではSIer離れも進んでいると聞きます。
- 若者の離職率の増加: ワークライフバランスを重視する若者が敬遠。デスマーチという言葉は現在でも健在。
- 優秀な人材の流出:一方で優秀な人材はコンサルティングファームへの転職も相次ぐ。巷では、SIerのことを”コンサル育成所”、”GAFAM育成機関”と揶揄されることもしばしば。
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SIer業界の将来性
課題が多い一方で、SIer業界には明るい未来も期待されているのも事実です。以下に、SIerの将来の可能性についていくつかの視点を紹介します。
DX推進における重要な役割
企業がDXを推進する中で、SIerはその実現をサポートする重要な存在となる可能性があります。これまでの”御用聞き”から対等なビジネスパートナー、DX推進のパートナーになる可能性があります。
長年の関係性から、時にクライアント以上にクライアントの業務やシステムを理解している知見からシステム開発、サービス提供以上の存在価値を出すことができる可能性があります。
特に次に分野での期待がされています。
- データ活用支援: ビッグデータの収集・解析基盤を構築及び、データの利活用。
- 業務プロセスの改善: ビジネスプロセス改革(BPR)の提案と実行。
クラウド化へのシフト
クラウドサービスを活用したソリューションの提供により、新たなビジネスチャンスが生まれます。
クライアント自らSaaS型サービスの導入、利用を進めることができるということは、裏を返せば、SIer自ら各種クラウドサービスを活用することも容易になっていると言えます。したがって、クラウドネイティブ(クラウドで実行されることを前提としてシステムやサービス)へのシフトが期待されます。
- ハイブリッドクラウド構築: オンプレミスとクラウドの統合管理。オンプレミスで稼働しているシステムも熟知し、クラウド技術にも優れた知見を活かすことが可能。
- SaaS型サービスの開発: SIer自らクラウドで実行されることを前提としてシステム、サービスを開発し、クライアント企業へ提供。
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まとめ
SIer業界は、多くの課題を抱えつつも、その将来性は大いに期待できます。特に、DX推進の波はブームではなく、大きな時代のうねりとなっています。DX推進のうねりに乗ることができるかどうかがSIerが今後も市場から必要とされ続けられるかの分岐点にあるといえます。
どんな時代であってもそうですが、特に変化の激しい時代からこそ、重要なのは変化を恐れずに挑戦を続けることだと思います。最新技術を積極的に取り入れ、クライアントや市場のニーズに応え続けることで、業界全体の進化を牽引していくことが求められています。
今後も、SIer業界の動向に注目しながら、一緒に成長していきましょう。
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