システム開発において、プロジェクトを成功に導くためには様々な工夫と努力が必要です。その中で、室脇 慶彦さんが「PMの哲学」という著書で説明されているプロジェクトマネジメントにおける三種の神器を照会したいと思います。プロジェクトを成功に導くために欠かせない3つのツールです。
実際にSIerの現場で働く私の経験と合わせて、各ツールの重要性と破壊力を照会したいと思います。
この記事をプロジェクトを成功に導くヒントにしてください。
また、今回ご紹介している「PMの哲学」についてはこちらの記事にて要約・書評もしているので合わせてご覧ください。
システム開発における3種の神器
ずばり、3種の神器とは、次の3つです。
サブシステム構成図
スケジュール
体制図
これら3つのドキュメントについて、室脇 慶彦さんの著書である「PMの哲学」では以下のように述べられていますので紹介します。
プロジェクトとしての計画の妥当性を証明するドキュメントとして使われます。つまり、これらの3つのドキュメントが常に整合性をもって、プロジェクトとして維持されていると、該当プロジェクトは正常化されている確率が高い、と経験的にNRIでは証明されているのです。
PMの哲学 室脇 慶彦 (著)
そして、これら3つのバランス、整合性が取られていることが重要だとも記されています。
ここからは1つ1つについて、私がSIerの現場で実際にどう活用しているかと共にそれぞれについて深堀していきます。
3種の神器①:サブシステム構成図
サブシステム構成図は、システム全体図と読み替えるとより分かりやすいかと思います。また、システム鳥観図でもよいと思います。
プロジェクトスコープとなるシステム群や各システムの機能配置を整理したものです。
実際に私が経験した大手食品メーカーの販売管理システムの刷新プロジェクトでは、販売領域を司るシステムと、生産計画を司る生産管理システム、原材料などを調達する購買システムをそれぞれ別の仕組みで構築するという難易度の高いプロジェクトでした。
そうした際に、この機能はどのシステム上で実現していくのかを1つずつ整理していきます。そして、私たちが担当する販売管理領域においても、受注管理領域と出荷管理領域といった具合に各領域でどのような機能を持ち、どのような業務を実現していくのかを整理していきます。
このように、システム全体図は今回対象とするシステムの立ち位置を明確にするために必要なドキュメントという訳です。
このドキュメントがなければ、誰がこのシステム、この機能について考えるのかの検討が漏れたり、逆にシステム間で機能が重複してしまったりと、不整合が起きてしまいます。こうしたことが無いように全体を捉えられるドキュメントは必須です。
3種の神器②:スケジュール
続いては、スケジュールです。進捗管理をするためのツールです。
スケジュールは、大日程、中日程、小日程と3つに分けることができますが、ここでいうスケジュールはそのすべてを指していると考えてください。
大日程計画はプロジェクト全体の計画です。仮にある工程に遅れがあってもプロジェクト全体でカットオーバーに間に合うように調整するのがプロジェクトマネジメントであり、プロジェクトマネージャーの仕事です。そのため、常に全体を俯瞰する目線を持ちます。
中日程は、現在の工程レベルでの進捗管理です。大日程という大きなスケジュール管理の下で、ゴルフでいうパーを出し続けることがプロジェクト全体が成功につながることに直結します。したがって、中日程レベルでの進捗管理も行います。
最後は、小日程ですが、これは日々の進捗管理です。直近1~2か月または、管理しやすい最小単位での作業計画です。メンバーの作業レベル、タスクレベルに1件ずつ落とし込んだものです。日次、長くても週次で確認をしていきます。
スケジュール管理は同然重要ですが、先ほどのサブシステム構成図との関連でいえば、サブシステム単位にスケジュールの進み具合を管理することでより厳密なプロジェクト管理を実現できます。ただ闇雲にプロジェクト全体の進捗を見るのではなく、サブシステムごとに濃淡を付けながら進捗を確認することが重要です。
スケジュール管理について、PMBOKのスケジュールマネジメントに照らしながら日々の実務でより使えるようにノウハウがまとまっているこちらの記事も合わせてご覧ください。
3種の神器③:体制図
最後は、プロジェクト体制図です。
このプロジェクトに関わる人の全員の名前を記します。そして、それぞれがどのようなう役割を持つのか明らかにします。体制図が担う重要な役割は誰の指揮命令の下で作業するのかを明確にすることにあります。
1つ目に挙げたサブシステム構成図との関連でいうと、私が経験したプロジェクトでは、大きな主要テーマが3つありました。そこで、体制図上、プロジェクトマネジメントを行うPMと、テーマ横断でアプリケーションのリードを行うPLを配置しつつ、各テーマに対してTL(チームリーダ)を敷く計画を立てていました。しかし、ある1つのテーマを担当したTLのスキル不足により、PLが全体リードもしつつ、あるテーマのリードも担当することとなり、結果PLの負荷が高まり、遅延を招いたということがありました。
このように体制図が実態とかけ離れていることや、サブシステム構成図との整合性が取れていないとプロジェクトは途端に失敗に突き進みます。トラブルになっているプロジェクトは大抵、体制図は実態とかけ離れており、役割分担も滅茶苦茶な状態になっています。
誰がどのような責任で誰の指揮のもとで動くのかをしっかりと整理されていない組織は弱いです。統率が取れず、連絡が行き渡らずに混乱を生じます。体制図は一度作ったらお終いにされがちですが、スケジュールやサブシステム構成図と共に常に最新化しておくことが大切です。
3種の神器は常に整合性を取ること
プロジェクトに矛盾が起きていないかを確認するために、3つのドキュメントを常に照らし合わせながら状況を注視し、もし矛盾を見つけたら是正をします。この確認作業をプロジェクト期間中はずっと継続することをぜひ忘れないでいただければ、きっとプロジェクトはうまくいくと思います。
ぜひ、今回の内容を参考にしていただき、日々のプロジェクトマネジメントに邁進していただければと思います。
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